花咲爺 花咲爺 はなさかじい
花咲爺


 正直者のお爺さんが我が子のようにかわいがっていた犬によって次々に幸運に恵まれるという物語です。正直者のお爺さんの幸運と隣に住んでいる欲張りなお爺さんとの不幸が交互に繰りかえされて展開する構成になっています。この昔噺の原典は「雁取爺(がんとりじい)」と言われています。これは枯れ木に花を咲かせる所が、灰を撒くと飛んでいる雁の目に入り雁を捕まえることができるというものです。
 中国、韓国ではお爺さんではなく兄弟が主人公になっているのが一般的です。明治以降に、教科書、童話、絵本などによって広く普及しました。
英語版(初版本)(15.0×10.0cm)
ディヴィッド・タムソン訳
1885(明治18)年10月1日発行
英語版(15.0×10.0cm)
ディヴィッド・タムソン訳
1886(明治19)年9月29日発行



八頭の大蛇










英語版(初版本)                  (15.0×9.5cm)                  チェンバレン訳               1886(明治19)年11月発行
やまた    おろち
八頭の大蛇


 頭と尾が8つずつある大蛇を須佐之男命(すさのおのみこと)が退治したという物語は「古事記」や「日本書紀」に書かれています。蛇は神の化身であり一般に水の神として信じられていたため「八頭の大蛇」は、古代の出雲地方の河川を氾濫させ洪水を引き起こして大きな被害をもたらすものと思われていました。その蛇を退治し治水を行った英雄が須佐之男命です。
 英雄が怪物を退治し、生贄(いけにえ)の娘を助けて娘と結婚するという人身御供譚は、アジアからヨーロッパにかけて流布していて、ギリシャ神話のアンドロメダ姫を助けた勇者ペルセウスの話は有名です。




松山鏡










英語版(初版本)                 (15.0×9.5cm)                 ジェームス夫人訳             1886(明治19)年12月発行
まつやまかがみ
松山鏡


 鏡に映る自分の姿を亡き母親の顔だと思っていたので、鏡ばかり見ている娘を継母(ままはは)がいじめていましたが、ある時娘の心が分かり仲直りをしたという物語です。
 当時大変珍しかった鏡によって誤解を招くという話は「尼裁判」とも呼ばれ、世界的な広がりを持っています。これは、殿様から鏡をもらった武士の話で、鏡にうつる自分の顔を死んだ父親だと思い込んでしまったために生じる妻の誤解です。そこへ尼がやってきて、鏡を見ると尼が映っていたので「みんなが喧嘩するので尼になってしまった」と言い、夫婦喧嘩がおさまったという話です。
 インドにも同様な物語があります。



海月











英語版(初版本)              (14.9×9.5cm)                1887(明治20)年2月17日発行
くらげ
海月

 
 竜宮の奥方の病を治すために猿の生き肝が必要になり猿を騙して一度は竜宮に連れてきますが、海月が猿に真相を話したために猿は逃げてしまいます。おしゃべりな海月はその罰として骨を抜かれてしまい、現在のような姿になったという物語です。この他に、タコや亀が登場するものがあり、我が国に流布しています。
 原典はインドと見られ、中国から我が国に伝えられたものと考えられています。東ヨーロッパでも知られいて、アフリカ、南アメリカにも同様な昔噺があります。