松戸学官連携推進事業「聖徳大学”食”に関する講演会(聖徳祭2日目)」イベント開催レポート

災害から考える食の危機管理 ~災害食を活用した食教育・防災教育~

 聖徳大学人間栄養学部人間栄養学科主催 松戸学官連携推進事業「聖徳大学”食”に関する講演会」を、平成30年11月17日(土)、18日(日)に開催いたしました。

 2日目は、新潟大学大学院 客員教授 日本災害食学会 理事・副会長の別府 茂先生を講師にお招きし「災害食」をテーマに、被災時に命を守るための防災教育を日常生活のための食教育にどのように生かせるかについてご講演いただきました。

 今回は、開催レポートとして、講演の様子を少しご紹介いたします。

 
災害時の食事の変化

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 私たちは、日常の便利で快適な生活に慣れてしまい、何不自由なく三度の食事をいただいていますが、それは、食材の生産から、流通、保存、購入、調理、食事の場のすべてが問題なく確保されているからです。この流れ(ネットワーク)のどこかに一つでも支障が出たらどうなるかを考えることから、講演は始まりました。

 災害時に何が起こるかを認識しなければ、何が必要で、何を準備しておかなければならないか実感できません。人的被害の発生した地震は、直近で24年間に13回発生したそうです。その災害の種類や被害状況、その時に取った対策や、これまでの対策から学んだとされる教訓をご紹介いただきました。

 別府先生のこれまでの経験によると、自助(自分たちでできること)、公助(救援・支援に頼ること)に分けて考えた災害対策の進め方があるとのことでした。こうした考え方に基づき、災害時の食事についての捉え方も、非常時に食べる備蓄性の高い食品から、災害時に役に立つ日常でも利用できる食品に変化しているそうです。

日常の食事を災害食と捉えて取り入れる

 また、別府先生が理事・副会長を務める日本災害食学会では、非常時にしか使わない備蓄品は廃棄するといった考えではなく、災害時にも役に立つ日常でも利用可能な食品をローリング・ストックしよう(定期的に消費・補充する)という考え方の普及にも取り組んでいるそうです。

 この方式では、日常の食事を災害食と捉えて取り入れることが重要だそうです。実際、お湯さえ沸かせれば、カップ麺やアルファー米、インスタント・レトルト食品などが使えるわけですから、既に日常利用しているものを上手に買い置きしながら利用していくことになります。日ごろキャンプや、ハイキング、登山などで利用するのとそんなに大きく変わるわけではない、屋外のちょっと特別なイベントの時の食事と捉えることができるわけです。そうなると、重要なのは、熱源と水(飲料水だけでなく、生活用水も含まれる)の確保という事になるのだと、改めて認識することができました。

災害に備えるという事は、日ごろの生活を強靭化すること

 災害時には、赤ちゃんからお年寄りまで、様々な方の多様なニーズにも対応しなければならないため、公助に頼るだけではなく、自助できる部分は自助し、互助、共助の体制も整えるという事になるのだという事を改めて考えさせられた時間となりました。

 最後に、熱源については、蓄電の例が紹介され、電気自動車やハイブリッド車の利用なども紹介されました。「災害に備えるという事は、日ごろの生活を強靭化すること」なのだという事を示す良い例となっており、正に、災害時を意識した日常の食教育の一部と捉えることができると改めて実感させられました。

 「災害は、備えた分だけ憂いなし」といわれますが、正に、防災教育と食育で学ぶことは、大切な備えであり、その機会と内容は豊富であればあるほど、憂いなしという事になるのだと学ぶことができました。

 参加者からは「災害食という言葉を知った。よく調べて自宅に備蓄したいと思う。」「災害食を活用した食教育・防災教育の必要性を感じた。」「保育園の給食調理の仕事をしている。災害時は、自分の家庭のほか、職場にいた場合の対策なども考えるべきと感じた。」などの感想が寄せられました。

 ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。

 今後も聖徳大学・聖徳大学短期大学部では、さまざまな講演会を開催する予定です。どうぞご期待ください。

一般社団法人全国栄養士養成施設協会

 本講演会は、栄養士養成施設が実施する社会貢献活動として一般社団法人全国栄養士養成施設協会の助成を受け開催いたしました。